ユメバナ

それは、夢の中だけの出来事。

一人の少女は、夢の中にしか存在しない。

なのに、一緒に過ごしている時、何か思い出したかのように悲しくなる。

そして、気がついて目覚めると、流れる程の涙で一杯なのだ。

こういう夢を見るのは、初めての事ではなかった。

少女は、多分、8歳くらい。
頭の中で、ナレーションのような女性の声が聞こえ、
「その少女はやがて………」
という。

テレビの見すぎかと思えてしまうシチュエーションだが、
初めての夢ではない。

その少女は、なぜか、自分の事、家族の事を知っていて、楽しい話や、どこかへ
出かけたりする。

夢の中でしかないその記憶は、今の日本ではないような、どこかわからない不思
議な世界。

同じ夢を何度か見て、いずれも泣いて目覚める、

それがどういう意味なのか、何の記憶なのか、まるでわからないのだ。

話している間にも、自分の足に笑顔で絡み付いたり、人なつっこい、

そんなところが、愛おしく感じて、
余計に涙をそそるのかもしれない。

そういえば少女の名前も、自分が何と言われてたかも、記憶がない。

それなのに、ナレーションの一言のタイミングで悲しくなるような感じだ。

少女の身に何かあったのだろうか？

でも、夢でしか出会った事がないから、聞ける相手もない。

夢の中の事を、現実に表現してみたい…

いや、夢の世界に連れて行きたい…
そんな思いにかられるのだ。